葛川 移住者・自分らしく生きる人達インタビュー

岡本梨奈さん

葛川で仕掛け罠の猟をしながら、動物の骨や角を素材にしたアクセサリーを制作し、インターネットで販売して生計をたてる岡本梨奈さん。岡本さんは葛川で自分らしい生き方を手に入れました。

岡本梨奈さん
旧鯖街道
  

葛川に移住するまで

-高島市から葛川に引っ越してきたいきさつをお聞かせください。-

 

出身は滋賀県高島市の北部にあるマキノ町です。絵をずっと描いていたので、絵の勉強のため京都精華大学に進学し、イラストレーションの勉強をしました。大学在学中に狩猟に興味を持ち、狩猟免許を取って、卒業してから絵を描く事と並行して、ぼちぼち狩猟を始めました。

 

卒業後は京都市内でアルバイトをして生活していました。自分で作ったもので生計を立てたいなと思いがあったのですが、京都に居る間はあまりがっつり狩猟もできなくて、ちょっと埒があかないなっていう感じになっていきました。

 

そんな時に、高校の同級生が高島市の南部にある家を借りてくれる人を探していたので、京都市から高島市に引っ越しました。

 

高島市もいい所だったんですが、隣近所が近くて、獲物を解体するところを子供に見られるときついかなと思っていたら、美術を通じて知り合った今の大家さんが葛川の出身で、ちょうど空いてる家があるから、好きにしていいよっていう話だったので、3年前に葛川に引っ越して来ました。

猟のこと

 

-岡本さんが狩猟に興味を持たれ理由は?-

 

大きく2つあって、1つ目は、自分で食べる肉を自分で獲れるっていうのがかっこいいなっていう。誰かに作ってもらったものを食べている、プロセスを知らずに消費しているっていうのはどうなんだろうっていう思いがあったんですね。

 

もう1つの理由は、ずっと絵を描いてきたんですけど、死生観をテーマにして来たんです。生きるということは一番根っこの部分にあって、それを語るには、自分で殺して食べる事を避けていては出来ないという気持ちがあったんです。間に結構空きがあったりもするんですけど、ちゃんとやりだして3年目くらいですね。

 

-猟はどうやってやっているんですか?-

 

私の猟は罠猟で、箱罠と括り罠があります。箱罠は、ケージのような小さい籠の中に餌があって、餌を引っ張ったら蓋が閉まります。括り罠は、ワイヤーで作った輪っかを地面に仕掛けて、作動するとワイヤの輪が閉まって、鹿の足を捕まえるというものです。罠猟は歩いて行ける範囲でやってます。捕まえた獲物は槍で心臓を一突きにしてとどめをさすようにしています。

 

-獲物は何ですか? どのくらい獲れるんですか?-

 

狩猟の期間が大体11月から3月までなんですけど、獲れるのは鹿がメインで、あと小さいのだとタヌキとか、ハクビシンとかですかね。

 

私の場合この期間内に2、3頭獲れればいい方です。かかった時はそれはもうてんやわんやです。血抜きをしてから内臓を抜いて、皮を剥いで、パーツで分ける。足4本と胴体と頭で分けるんですけど、それがだいたい3時間か3時間半位かかりますね。

 

そこから解体して、パーツ分けした肉を更に骨から剥がして、細かい部位で分けてパック詰めにして、冷凍します。その後、皮を塩漬けにします。

 

頭とか骨は煮込める部分は煮込んで、胴体や頭の骨などの大きい部分は泥水につけておくと、土の中にいる微生物が分解してくれるので、綺麗に骨になります。

作業

制作作業中の岡本梨奈さん

 

-肉は販売するんですか?-

 

販売はしてないですね。販売するためには、保健所の認可を受けた施設で、認可された方法で解体しないといけないんです。そもそも私の場合、鹿1頭獲っても運べないので、その場で内臓を抜いて解体します。そういう肉は販売できないんです。

 

-それでは何のために狩猟をしているんですか?-

 

商売のために狩猟してるわけじゃなくて、自分で食べるのがメインなんです。自分がしたい生き方というか、自分の力で食べる肉を獲ることと、獲った獲物を出来るだけ利活用したいなと思っているんです。

 

彫刻のこと

 

-そうすると収入は骨や角の彫刻ということですか?-

 

そうです。鹿の骨と鹿の角を加工・販売して生計を立てています。販売は自分のネットショップを立ち上げたので、そこで買ってもらうのがメインですね。買ってくれる人も増えましたし、オーダーをくださる方も増えてきました。あと東京ビッグサイトで春と秋に2回行われるデザインフェスタのように、作家さんが集まって作品を販売するイベントに参加したりしています。

 

-彫刻も精華大学在学中に学ばれたんですか?-

 

いえ、大学では絵だけやってきて、卒業してから狩猟を本格的に始めて、狩猟をやっていく中で、角とか骨の利活用があまりされていない事を知って、独学で学びました。彫刻もそれぐらいかな?なるべくたくさんの人に手にとってもらって、なおかつ狩猟活動を知ってもらうきっかけにもなったらいいなっていう風にって思ってます。

 

-今の時代、アートで食べていきやすい時代になってきたんですかね?-

 

ネットとか SNS とかの発信する手段が増えたので、食べる手段は増えたと思いますね。ウェブショップもすごく簡単に作れるようになってきたので、そこを上手いことやれば、食べていく事はできるかなと思います。

作業拡大

リューターで大まかに削った後、細部の調整に入っていきます。

 

葛川での生活

 

-葛川に住んでみた印象を教えてください。-

 

山の中なので当たり前なんですけど、環境がいいですね。山が近いし、山がでかいっていう感じ。高島市の実家にも山はあったんですけど、ここまで山は近くなかったんですよ。葛川は、景色にも迫力があって、何かちょっとワクワクします。それに山が近ければ近いほど、罠をかけに行くのが楽なので、凄く都合がいいんです。

 

元々山の中にいると落ち着くということもあるんですけど、環境が肌に合うというか。また、庭が広く使えるのと、隣近所の人がすごいいい人ばっかりなのでありがたいです。

 

それに、京都や大阪に出るのが簡単というか、京都なら車で40分走ったら出れるんですよ。山の中ですけど、街には出やすいですね。

 

-1日の生活サイクルはどんな感じですか?-

 

朝起きて、罠を見に行って、メールをチェックして、必要なら返信します。その後作品を制作して、少し事務作業とかをして寝るっていう感じです。でも、1頭取れたら大仕事です。全部予定が狂います。嬉しいけど、納期が(笑)。

 

-家は賃貸ですか?-

 

そうです。かなり安い値段で貸してもらってます。今の大家さんがが若い時にちょっとだ け住んでいた家で、トイレも水洗じゃなくって、風呂は五右衛門風呂ですけど使えないので、銭湯に行っています。私は仕事で結構あちこち行きますし、大津にも京都の街中にもあるので、不便は感じませんね。

作品1 作品2

岡本さんの作品 岡本梨奈さんのホームページより

 

-インターネットの接続環境はどうですか?繋がりにくいという話も聞きますが-

 

光回線とかは来てないんですけど、wiMAX が入るので結構大丈夫です。ウェブショップとか、画像のアップとかも問題なく出来ますし、スカイプで会議もしています。

 

-買い物は、不便を感じるようなことはないんですか?-

 

そんなには感じていません。ネットでも頼めますし、高島市朽木の商店とかコンビニのある所まで車で10分で行けますし。高島市の安曇川も、大津市の堅田も、どちらも車で30分ぐらいなんです。私は運転は苦ではないですし、どちら店がたくさんあるので、そこで買いだめしてますね。

 

-病院はどうしているんですか?-

 

葛川にある診療所には行ってなくて、高島市の方の病院に行ってますね。

 

-地域の方々との人間関係はどうですか?-

 

何かこう、いい感じにゆるっとしてるというか、いい具合にほっといてくれてる感じが、すごくありがたいです。結構引きこもらせてくれるというか。でも外に出たら、春先とか、暖かくなってきたら、みんな外に出たり、畑したりしているんで、歩いてたらちょっと挨拶して、ちょっとだけ話をしてとか。なので、距離感が本当にちょうどいい感じ。心地いいですね。だから付き合いで疲れちゃうっていうようなことはないですね。

葛川の暮らしは困りごとだらけだけど・・・

 

-苦労した点があれば教えて下さい。-

 

まあお風呂をどこかに入りにいかないといけないとか、夏場めちゃくちゃムカデやマムシが出るとか、一般的に見たら、困りごとだらけだろうなとは思うんですけど、自分としてはそんなに困った事はなくて。

 

困り事とか、不便とか、どう対処していくかっていうだけの話で、どうにかなるっていう感じなので。だから困り事はあってないようなものというか、そんな風に思ってます。我慢できないことがあったら住めてないですしね。

-お話をお聞きしていると、岡本さんは移住することが目的で葛川に来たわけではなく、自分の生き方を実現できる場所を求めていたら、そこが葛川だったっていう感じですね?-

 

そうですね。私にとってはそんなに不便はないですし。自分のやりたいことができる場所というか、やりやすい場所を探していたら、葛川にたどり着いたっていう感じです。

雪の上の足跡