高島市 移住者・豊かに暮らす人達インタビュー

畑の棚田の保全に取り組む 林典夫さんにお話を伺いました

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林典夫さん

棚田保存会 林典夫さん

 

畑の棚田の現状

高島市南部の畑地区は、滋賀県で唯一日本の棚田百選に選ばれた、美しい棚田が広がっています。その美しい風景は、様々な媒体で紹介されていますが、現実には耕作放棄地の増加や後継者不足など、多くの課題を抱えています。畑の棚田の現状について、現地で奮闘されている林典夫さんにお話を伺いました。

畑地区の集落

畑地区の集落

 

高齢化率は57%

畑地区の戸数は30戸。家そのものは40戸ぐらいあるんですけど、あの10戸ぐらいが空き家になってまして、30戸ぐらいが住んでいるということで、人口は大体70人ぐらいでその中でも高齢化率は57%と、約40人近くが65歳以上の高齢者ということになってますね。

農業に従事しているのは65歳以上の方がほとんどで、70代の後半から80代の前半ぐらいの人が中心でこの畑の農地を守ってると言う状況です。

春の棚田集落

春の棚田集落

秋の棚田集落

秋の棚田集落

農地は年々減少

農地としては、昭和40年ぐらいまでは大体30haぐらいがあったようですけど、その後だんだん農地も減ってきて、平成11年の日本の棚田百選に認定される頃には15.4haと約半分になってますし、それからまた20年ほど経過した今日では、さらに耕作放棄された土地が増て、大体10haぐらいになってます。

棚田オーナー制度

オーナー制度は、オーナーの方を募集して、100平方メートルについて1年間権利を買っていただくということで、3万3千円頂いてます。

今オーナーさんには3つのコースを作ってまして、1つはおまかせコース、2つがこだわりコースで、3つ目は酒オーナーコースで、皆さんに選んでいただいています。

おまかせコースは、田植えと稲刈りだけ来てもらうコースです。こだわりコースは、田植えと稲刈り以外に草取りや草刈りに来ていただきます。

秋には収穫されたお米を40kg、酒オーナーコースは、お米40kg相当分のお酒をお渡ししてます。

例年30組ぐらいで100人程度のオーナーさんに来て頂いてます。リピーターもかなりおられまして京阪神中心に来て頂いてますね。

草刈りの様子

草刈りの様子

稲刈りの様子

稲刈りの様子

若者がいない

残念ながら保育園・小学生・中学生・高校生・大学生は0で、今後の見通しも今のところない状況ですね。今までこの地区に移住された方は、4、5件くらいで、比較的高齢の方、高齢世帯とか独居の方が多いです。空き家は、たまに帰ってくるとかね、お仏壇・先祖をまだ置いてるんやっていうのがありますんで、その辺が解決できれば可能かなとは思うんですけども、具体的にそういう話があった時には、こちらとしても、そういう対応していかないとダメかなと思ってますね。

この地区を後世に伝えたい

歴史的には、非常に古い地域で、他所にはない歴史もありますし、色んな宝物というのか、神社に行けば大木もあるしっていうことで、棚田も百選に選ばれてる棚田でもあるんで、僕は地域としては非常に魅力のある地域やし、ずっと残していきたいなというような気持ちは十分持ってます。是非住んで頂けたら、その良さもわかってもらえるんかなと。地域住民の人柄もね、非常に少なくなってきてますけども、さっき言いましたように、ウエルカムでみんながそんな気持ちでね、人見知りもしない、できるだけ多くの人に来て頂いて、一緒に棚田の保全が少しでもできたらいいかなって、そんなふうに思ってます。

すぐに復田できる水田

畑地区の神社

復田に数年かかる水田

畑地区の観音堂と石仏

棚田米の魅力

お米は、昼と夜の寒暖の差の大きい地域の方が美味しいと言われてまして、この畑地区もそういう地域なんです。以前あるイベントで旅行に来られた方々に対して畑の棚田米で作ったおにぎりをを提供したことがありましてね、その時に魚沼産の米よりも美味しいという風におっしゃっていただいて、これから畑の棚田米に切り替えて買うよっておっしゃっていただいた方もあります。

地元の高島市内の造り酒屋さんの福井弥平商店さんと提携して、ここで採れたお米(コシヒカリ)を使ってお酒を作って頂いてます。里山という名前で畑の地域の棚田のこともPRして頂いています。

耕作放棄地の実態

比較的容易に復田できる水田

ここはまだ頻繁に草が刈られていて地面が見えてる状態なので、すぐに復田出来ますね。保全管理というのは、こういう、いつでも田んぼとしてあるいは畑としてね、使用することができるような状態にしておくいうことなんです。

復田できるまでに数年かかる水田

10年以上経った水田です。ススキの株ってかなり大きいんですよね。大きい株だと根も大きいので、草を刈った後に、すぐ水田を耕そうかといっても耕せないんですね。3年ぐらいかけて、こまめに草刈りをすることによって、根が小さくなってくるんで、小っちゃくなってきた時点で耕すという、そういう作業してこないと、復田はなかなか出来ないですね。

すぐに復田できる水田

すぐに復田できる水田

復田に数年かかる水田

ススキが生い茂り、復田に数年かかる水田

電気柵

集落全体を囲む電気柵と水田・畑の電気柵

あれがそもそもお金をかけてやった電気柵なんですよ。下から180cm位までは、金網が張ってあって、その上に3、4段ぐらいやったと思うけど、電気が通ってる。

水田の電気柵は、電気を流す線が3、4本あれば、それでイノシシは絶対に入らない。ただ、下が草と接触する所があるでしょ?これやとドロップしちゃって、電気が通電しない状態になるんで、だからもう電気柵をやった時は、この下の草をきっちり刈ってやらないとダメなんですよ。

電気柵で囲んで、なおかつ上も網で覆っている畑。でもこれだけやっても入られたって言ってましたよ。

集落全体を囲む電気柵

集落全体を囲む電気柵

水田の電気柵

水田の電気柵

上もネットで覆われた畑

上もネットで覆われた畑

   

杉林になった棚田

昭和40年ぐらいから耕運機やトラクターが出てきて、急峻な所の作業は、非常に危険が伴うこと、またその時期から、国が生産調整といって米の代わりに他の物を作れという政策を打ち出してきて、耕作放棄に拍車がかり、だんだんと山際の田んぼから杉を植えて耕作放棄されてきたんです。今山裾には杉の木が植わってますが、これはその時以来の景観です。実際現地に入ると、段々の形がまだきれいに残ってますので、以前は田んぼだったなということがわかりますよ。

杉林

赤い部分はもともと棚田だったところです

杉林

杉が植えられた棚田

棚田オーナー制度のこれから

オーナー制度を20年あまりやってきて、マンネリ化とか高齢化とか難しい事が出てきてるんですけども、棚田を保全するという観点から考えたら、やはりこの取り組みをやめてしまうと、この地域と都市住民との繋がりがほとんどなくなってしまうので、そこを何とか工夫したいなという事を思ってるんですけど、今までとは違う形で運営できないかなと考えてます。例えば今まで地元中心で運営してきたオーナー制度を、オーナーさん中心の制度というのが出来ないかなって。昼食を作るにも、オーナーさんの奥さんに作ってもらうとか、もっともっとオーナーさんに関わってもらえるような制度が出来たらいいなと、僕の想いとして持っています。オーナー制度は続けていきたいなって思ってます。

多くの中山間地と同様、畑地区でも、依然として厳しい状態が続いています。集落の再生は簡単ではありませんが、畑地区の皆さんは前向きに取り組んでいらっしゃいます。コロナ次第ですが、来年度は再び棚田オーナーを募集したいとおっしゃる林さん。これからも畑地区の取り組みについてお伝えしていければと思います。